インフォメーションアーキテクチャとしてのSession-22


TBSラジオで荻上チキ Session-22という番組がある。

荻上チキ・Session-22
http://www.tbsradio.jp/ss954/

荻上チキ・Session-22|TBSラジオCLOUD
https://radiocloud.jp/archive/ss954

評論家の荻上チキ氏が毎回テーマを設定し、専門家を招きながらディスカッションしたり、レクチャーを受けたりするというスタイルの番組。Podcast時代から通勤時にはほぼこの番組のアーカイブを聞いているのだが(いまはWebベースのTBSラジオクラウドサービスを経て専用アプリもしくはRadikoから聞ける)、この番組は優れたインフォメーションアーキテクトとしての仕事であると受け止めている。

この番組は、番組内で「探求モード」「レクチャーモード」「わいわいモード」などテーマがわかれており、特に探求モードやレクチャーモードでは、中東問題にせよ東芝問題にせよ、その分野の専門家を呼んできて、かなりそもそものところからの話をしてもらうスタイルをとっている。

荻上チキ・Session-22|ウィキペディア日本語版
https://ja.wikipedia.org/wiki/荻上チキ・Session-22

ここで、荻上チキ氏のポジションは、よい聞き手役。話を聞いているとおそらく氏がすでに知っていることも多そうであるのだが、基本的にはゲストに素朴な質問を投げかけて、語らせるスタイルをとっている。この誘導の妥当さによって、まさにいま起こっている出来事について、1時間弱の時間でその背景から技術的なトピックスまでを一通り把握することができる。これはかなりコストパフォーマンスのよい番組だ(時は金なり)。まず、時事問題の適切な把握のためだけにでもこの番組はおすすめできる。最近では、稲田防衛大臣の答弁や東芝の半導体部門売却について、一般的なメディアでの取り上げ方とは異なる視点での理解が得られた。

これに加えてこの番組の新しい点は、話のゴールを論点を洗い出すことに置いているところ。単にいろいろ教えてもらって勉強になりました〜というわけではなく、いま、このトピックでは何を論じなければならないのか、逆に言えばどこはスルーしてよいのか、といったことを明示するというスタイルが定番になっている。

それぞれの問題は、安易に結論に飛びつくことは危険であるし、そもそも単純な結論が存在しないような問題のほうが多い。そういった物事に対して、結論ではなく、その問題を取り扱うための論点=視点を定義するという態度は大変生産的であり、聞いている側にとっても有意義な情報である。

お気づきの方もいるかもしれないが、僕自身、去年くらいからパネルディスカッションのモデレータを担当するときは、この荻上氏のスタイルにかなり影響を受けている。世ではパネルディスカッションというものの存在意義が疑われているような風潮もあるが、このスタイルをとってからパネルディスカッションというものが大変生産的になり、自分としてはかなり成功していると感じている。

いつも驚かされるのが、その人選であり、スピード感で、東芝問題などは、その日の発表をその晩に解体して議論している。ほぼリアルタイムといってもよいスピード感。この取り組み自体が、起こっている現象を理解するためのフレームワークとしてとらえることができ、番組の活動体自体が理解を促すためのインフォメーションアーキテクチャであり、プロデュースしている荻上氏はまさにインフォメーションアーキテクトであるといえよう。

荻上氏のこの番組は、この他にも番組発で薬物報道ガイドラインを作成するなど、いわゆるラジオ番組の範疇を超えた活動にも結びついており、氏の活動プラットフォームとしても活用できているところが興味深い。

ラジオ番組ということで、ひとつのメディアとしての形態ととらえられがちであるが、氏のプロデュースによって動的なフレームワークとして機能しているこの番組、現代のインフォメーションアーキテクチャとしてぜひとりあげておきたい。

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