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My Bloody Valentine in Roundhouse

去る6月21日、15年越しでMy Bloody Valentineのライブを見ることができた。

マイ・ブラッディ・バレンタイン – Wikipedia

マイブラは僕にとってはPowers of Ten(イームズ)、ファインマン(物理)、リチャード・ソウル・ワーマン(編集者)、とならんで人生を変えた存在であるが、ライブを見るに当たって一抹の不安もあった。

キャンセルされた前回の来日公演の雪辱を遂げるために、公演が発表された昨年末に、日程も考えずにチケットをとったのだが(実際はそのときとったチケットはマンチェスター公演だったのだが、その後eBayでロンドン公演をゲット)、さすがに15年もバンド活動を行っていないわけで、はたしてちゃんと演奏できるのか?そして、肝心の音はどうなのか?

マイブラはアルバムを2枚しか出していないが、その2枚目「loveless(1991)」は、歪んだギターの多重録音、ダンスミュージックやさまざまなリズムの導入(でもロック)と、シューゲイザー(うつむいて靴紐(シュー)を見ながら(ゲイズ)轟音を鳴らすロックバンドのこと)の代表としてだけでなく、90年代ロックを代表するようなアルバムである。

ちなみに、日本ではマイブラ自体も人気があったが、当時発売されたフリッパーズ・ギターの3枚目のアルバム「ヘッド博士の世界塔」でプライマルスクリームとともにサンプリング(ぱくり?)されている。

90年代の来日予定当時から、「はたしてライブでこの音が再現できるのか?」というのは当時の僕らのまわり(とか下北沢界隈)での一番の関心事であり、ある意味日本のインディーシーンでもどうやればああいった音を再現できるのか?というのがギタープレイヤーにとっては研究の対象だった。

実際、テープに録音してああいった音を出すのと、ライブで出音としてああいった音にする、というのとでは、やりかたが全然違っていて、また単体でそういう音色を作っても、バンドアンサンブルとして観客席でそう聞こえるか、というのはまた全然違っている。

当時は、ロンドンや下北のクラブでもシューゲイザーナイトが盛んに開催されていた。当時住んでいた仙台ではそういったクラブイベントはなかったので、太朗くん、菅井くん、相原くんらとSUGAR BOWL(シュガーボウル)というイベントを開催したりしていた。

こういったイベントでは、むしろライブよりも純粋に轟音ギターサウンドを体験できていた。

というのは、ライブというのはやはり演奏者がいるので、みんなそっちを向いて、演奏を見たくなるものだが、シューゲイザーサウンドはどっちかっていうと音に埋もれたい音楽なので、演奏者がいない形態の方が純粋に音だけを楽しめるのだ。

当然こういったイベントでは、わりとみんなスピーカーに向かって下を向いて踊りともゆらぎともつかぬような怪しい動きをしていた。僕がオーガナイズしていたSUGAR BOWLでも、通常のハコではなく、レゲエ用のサウンドシステムがある場所でイベントを開催していた。轟音のために。

と、そんな事情があっただけに実際にライブを見るってのは、なんというか夢を打ち崩しちゃうんじゃないか?的な器具があったのであった。ということで、ライブはどうだったかというと、すばらしかった。待った甲斐があった。思っていた以上だった。

ケビンはギターアンプを5台用意(マーシャル、VOX、ハイワット)、ビリンダ側は2台かな?ケビンが右側、ビリンダが左側。リズムセクションのコルムとデビーが中央。

それぞれの音がモニターできるように、各自のブースは透明なパーティションで区切られていた。

一曲め、only shallowでスタート。まず轟音におぼれる。一同大歓声。

僕は、全体的な音を体験したかったので、前列ではなく、そのちょっと後ろあたりの、左右両方のスピーカーとちょうど正三角形になるあたりに陣取った。

1曲の新曲を除いて、ほぼlovelessからの選曲。

CDの音そのまま、ではもちろんないが、ギターの音はむしろCDよりも気持ちいい。ちなみにケビン、ビリンダは全曲ギターを換えていた。

ギターの音は、ジャズマスっぽい単体では若干ジャリジャリした音色に聞こえるが、全体的なバランスの中では「あの」loevlessの音になっている!この音を再現したくてバンドを始めた身としてはこのアンサンブルが聴きたかった!

ビリンダの歌声のバランスもまさに絶妙(ケビンの歌もよかったけど)。

コルムのドラムは、lovelessではケビンがサンプリングして、生のドラムプレイは一切使われていないと評判だったので、再現できるか不安だったが、みごとに再現というかプレイしていた。

どの曲も、オリジナル(CDの音)よりも凶暴で、音の壁というよりは、音の空間を作り出していた。

このライブの音源がリリースされたら(たぶんブートレグとかでも出回るんだろうけど)、CDよりもいいような気がする。

でも、空間としてのこの音は、ラウンドハウスの円形劇場的な空間と相まって、ここでしか体験できない音の気がする。

わりと好きなWhen You Sleepもよかったが、途中soonが始まるとやはりいてもたってもいられなくなり、最前線へ。前列ではさらにベースの音がぶんぶんうなっている。

いまいち全体のノリは悪いがさすがに中央の前の方ではみな踊り狂っている。

feed me with your kiss、you made me realiseと続く。もうこのあたりでは、ほとんど縦ノリ。

you made me realiseでは終盤ノイズパートが30分近くあった。その間、メンバーはおなじノイズを延々出し続けている。そして、終了。

約1時間30分のライブ(そのうちノイズパートが30分)。ケビンとビリンダはMCもなく黙々と演奏し続けていた。

クラブで流れる音より、レコードで聴く音より、断然よい。

最終的な、本当のマイブラの音が聴けた。

この音を出すために、15年研究したんだろうな、と思った。

まさに至福のライブだった。

このライブでケビンの職人的な気質を改めて実感できた。

フジロックは野外+複合イベントってことで別の不安もあるが、これはぜひ体験すべきライブだ。

080627追記:新曲はなかった模様

セットリスト

  1. Only Shallow
  2. When You Sleep
  3. You Never Should
  4. (When You Wake) You’re Still In A Dream
  5. Lose My Breath
  6. I Only Said
  7. Come In Alone
  8. Thorn
  9. Nothing Much To Lose
  10. To Here Knows When
  11. Slow
  12. Blown A Wish
  13. Soon
  14. Feed Me With Your Kiss
  15. Sueisfine
  16. You Made Me Realise